おはようございます、大阪の社労士有馬です
今回は国民年金の話題です
国民年金は主に自営業の人や学生や失業中の人が加入するものですが、その国民年金の保険料免除の制度があることはご存知でしょうか?
また、免除制度にも二種類(正しくは三種類ありますが、学生納付特例は今回話の内容から省きます)あって、同じ免除なのにやり方しだいでは将来もらえるお金に天と地ほどの差ができるのはご存知でしょうか?
今回はそんな国民年金保険料の免除制度について解説していきます
この記事を書いている私は勤務・開業合わせて社会保険労務士を4年ほど。日本年金機構大阪広域事務センター(大阪の年金機構に届出された届書を一括で審査する場所です)にも勤務していた経験があります
日本は高齢化社会に差し掛かり、これから年金の重要度はますます増加していくことが予想されます
将来の大切な生活の資金となる年金について今のうちに詳しく知っておきましょう
国民年金保険料の二種類の免除制度
今回は国民年金の三つ目の免除制度、学生納付特例に関しては触れることはありません
なので、この記事では免除制度は2種類という書き方をしていますのでご注意ください
国民年金保険料は毎月一定額を納めるものですが、経済的に納めるのが難しい人のために保険料の免除制度というものがあります
国民年金をもらうためには10年間保険料を納め続ける必要がありますが、経済的な問題で保険料を納めることができない人がいると、将来さらに困窮してしまうことが予想されます
そんな人たちの救済措置として年金保険料の免除制度があります
免除されている期間でもその月分カウントされるという制度です
例:2年間免除を受けていても年金保険料を納めた期間は2年間とカウントされる
ちなみに厚生年金には保険料免除制度はありませんので、会社勤めの方には関係ありません(出産・育児等一部の例外あり
自分が国民年金なのか厚生年金なのか気になる方は過去にそのあたりを開設した記事がありますのでそちらの記事もあわせてお読みください
【1号】夫が仕事を辞めた時は特に注意。年金手続きは忘れずにしよう【3号】
おはようございます、社会保険労務士の有馬です。今回は配偶者が仕事を辞めた時に発生する忘れがちな年金手続きについてご説明します。年金は将来の生活の資金となる大切なお金です。手続きを忘れると年金が減ってしまうので、忘れずに手続きをしておきましょう
国民年金の保険料免除申請ですがこのように分かれています
- 通常の保険料免除
- 納付執行猶予制度を使った保険料免除
これらについて一つ一つ見ていきましょう
通常の保険料免除について
まずは通常の保険料免除制度についてです
この通常の保険料免除制度について日本年金機構のHPではこう書かれています
所得が少なく本人・世帯主・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請される場合は前々年所得)が一定額以下の場合や失業した場合など、国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合は、ご本人から申請書を提出いただき、申請後に承認されると保険料の納付が免除になります。
免除される額は、全額、4分の3、半額、4分の1の四種類があります。
<日本年金機構HPより抜粋>
要約すると本人・世帯主・配偶者の所得が一定額以下の場合、保険料が全額、4分の3、半額、あるいは4分の1免除されるという制度です
とてもありがたい制度ですね
次は納付猶予制度についてです
納付猶予制度について
納付執行猶予制度について日本年金機構のHPにはこう書かれています
20歳から50歳未満の方で、本人・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請される場合は前々年所得)が一定額以下の場合には、ご本人から申請書を提出いただき、申請後に承認されると保険料の納付が猶予されます。これを納付猶予制度といいます。
※平成28年6月までは30歳未満、平成28年7月以降は50歳未満が納付猶予制度の対象となります。
<日本年金機構HPより引用>
要約すると、本人・配偶者の前年の所得が一定額以下だと、納付が猶予されるということです。なお、この制度は50歳未満が対象です
ところで保険料免除制度と納付猶予制度、かなり似ていますよね?
免除と猶予で、ほとんど言葉遊びに近いくらいの違いに見えますが実はかなりの違いがあります
この違いについて次の段落で詳しく説明していきます
免除の仕方でこんなにも違う。国民年金の二種類の免除制度
結論から言うと、保険料免除制度と納付猶予制度の違いは将来の年金額です
年金は自分で納めた分だけ将来もらえるというものです(本来は違うのですがイメージとしてはそんな感じです。詳しく知りたい方は世代間扶養で調べてみてください
なので、保険料を払わないと将来もらえる年金の額が減額されてしまいます
保険料免除制度も納付猶予制度もどちらも自分で納める保険料の額の一部、あるいは全部を免除してもらうという制度ですから、当然将来もらえる年金の額がへります
しかし、その保険料免除制度と納付猶予制度では実はその減り方にかなりの差ができてきます
なぜなら前者は免除なのに対し、後者はあくまでも納付猶予だからです
国民年金保険料の国庫負担について
国民年金保険料は実は自分で納めた分のほかに国が同じ金額を負担してくれています
たとえば平成○○年度の国民年金の保険料が一万円だとすれば、国も一万円あなたのために納めてくれています。これを国庫負担といいます
これは保険料免除制度を利用しても同じで、たとえば半額免除の場合1万円の半額ですからあなたは国に5千円納めることになるのですが、その場合でも国は1万円あなたのために国庫負担で年金保険料を納めてくれます。全額免除、4分の3免除、4分の1免除のときも同様です
しかし、納付猶予制度の場合は国の2分の1負担はありません
保険料免除制度と納付猶予制度の違いのイメージ
たとえば国民年金保険料の全額を16個の箱だとして通常は
□□□□□□□□ □□□□□□□□
だけの箱を納める
そのうち、左の8つに関しては国が納めてくれる
右の箱を自分で納めて左の箱は国が納めてくれているイメージだ
保険料免除制度で全額免除の場合は
□□□□□□□□
となり、全額免除なので自分で納める箱はゼロで国が収めてくれる箱は8個となる
合計で8つの箱を保険料として納めたことになる
4分の3免除の場合は
□□□□□□ □□□□□□□□
となり、自分で納める箱は8個のうちの4分の3
つまり自分で納める箱は6個となり、国が納めてくれる箱は8個となる
最終的には合計で14個の箱を保険料として納めたことになる
しかし、納付夕猶予制度を利用した場合は
つまり自分で納める箱はゼロ。国が納めてくれる箱もゼロとなり
将来もらえる年金の額に1円もプラスされないということになる
かなり理解しにくいと思いますが、要は
保険料の免除制度は将来の年金額が増えるが
納付猶予制度を利用した場合は増えない
ということです
とりあえずここだけ抑えておけば大丈夫です
しかしここで当然の疑問が出てくると思います
同じような制度で将来の保険料が増えないのなら納付猶予制度の存在意義はいったいなんなのかということです
それについて次の段落で解説していきます
納付猶予制度は実はこういう制度
保険料免除制度と納付猶予制度の最大の違いは所得の条件に世帯主の所得があるかないかということです
どういうことかというと、親の世帯に入っている場合でも自身の所得と配偶者の所得しか見られないということです
一番最初に保険料の免除の制度は無年金者をなくすための措置だということをお話しましたが、納付猶予制度は免除制度よりもさらに大きな範囲を掬う網ということになります
国民年金は保険料を10年間納めないと将来、年金をもらうことはできません
未納の期間ができないよう心当たりのある方は早めの確認をオススメします
繰り返しになりますが、過去に未納期間ができやすい期間についての解説の記事を書いていますのでもう一度ここにリンクを載せておきます
【1号】夫が仕事を辞めた時は特に注意。年金手続きは忘れずにしよう【3号】
おはようございます、社会保険労務士の有馬です。今回は配偶者が仕事を辞めた時に発生する忘れがちな年金手続きについてご説明します。年金は将来の生活の資金となる大切なお金です。手続きを忘れると年金が減ってしまうので、忘れずに手続きをしておきましょう
最後にちょっとアドバイスです
保険料免除と納付猶予の違いは将来の年金額に反映されないことだと書きましたが、それなら、できることなら納付猶予より保険料免除のほうがありがたいですよね?
保険料免除と納付猶予は世帯主の収入が条件に含まれるかどうかだとも書きましたが、この世帯というのは戸籍の世帯ではなく、住民票の世帯のことなんです
つまりお近くの役所で世帯分離の手続きをすれば、生計を維持している世帯主とは別の世帯になりますから、独身の人ですと、納付猶予制度の時と同じく、保険料免除制度の場合でも自身の収入のみが見られるということになります
住所が同じでも世帯分離はできますので、納付猶予よりも免除申請の制度を利用したいという方は一度検討してみるとといいでしょう
ただし、世帯分離すると今まで世帯になっていた人の住民票がとれなくなったり(委任状が必要になる)健康保険などで少し要件が変わってくる場合があるので、そのあたりのデメリットはお近くの役所や年金機構、あるいは専門家に相談してみるとよいでしょう
まとめ
保険料免除と納付猶予は同じように見えて実はかなり違う制度です
どちらが自分にとって必要なのか届出や相談する場合必ず確認しておきましょう
年金は今すぐに関係あるものではないかもしれませんが、将来においてはかなり重要なウエイトを占めるものです
年金額が減ったりもらえなかったりしないようしっかりと今のうちに対策をしておきましょう
今回は以上となります
この記事が皆様のお役に立てれば幸いです