おはようございます、社労士の有馬です
会社に勤めていて引越しをしたことがある人なら、引越し前と引越し後で給料が変わったという経験をしたことがあるかと思いますが、その原因は社会保険料が変更されているために起きていることなんです
社会保険料は何故変更されるのか。そのタイミングについて解説します
もくじ
社会保険料は給料から天引きされることがほとんどです
その場合、随時改定で社会保険料が高くなってしまうと、制度を知らない人が見ると、自分の給料が理不尽に減額されたと感じてしまう場合があります
そうならないためにも労務管理担当者は、どういう原因で給料の金額が変わったのかきちんと説明できる必要があるでしょう
お金に関するトラブルは事前の予防が大事です
社会保険料の変更のタイミングについてもう一度確認しておきましょう
※今回出てくる年金保険料は全て厚生年金保険料のことです
社会保険料・雇用保険料についての確認
まずは社会保険料について確認しておきましょう
社会保険料とは健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料のことです
このうち健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料(労災保険料以外)は従業員負担があり、毎月の給料から天引きされています
介護保険に関しては40歳の誕生日の前日(満40歳に達したとき)の属する月から徴収されます
40歳未満は徴収されないのと、従業員が40歳の誕生日の前日(満40歳に達したとき)が訪れたとき、徴収忘れがないよう注意しましょう
これらの社会保険料(労災保険料以外)は給料によって徴収される金額かわるので、納める金額は人それぞれです。給料が高ければ高いほど多く徴収されます
まとめると以下のようになります
社会保険料とは健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料のこと
介護保険が徴収されるのは40歳の誕生日の前日(満40歳に達したとき)の属する月から
労災保険料以外の社会保険料は給料の金額によって変わるので人それぞれ
社会保険が変更されるとき。雇用保険料編
社会保険料は大きく二種類に分けることができます
狭義の社会保険料に該当する健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料と
労働保険料に該当する雇用保険料、労災保険料です
この段落では雇用保険料が変更される時について説明します
雇用保険料の計算方法
雇用保険料の計算方法は以下のようになっています
給料の全額(税金・社会保険料控除前の金額) × 雇用保険料率
賞与の全額(税金・社会保険料控除前の金額) × 雇用保険料率
この給料の全額というのは以下のものを含めた金額です
- 通勤手当(非課税分を含む)、定期券・回数券(通勤のための現物支給分)
- 超過勤務手当・深夜手当(いわゆる残業手当など)、宿直手当・日直手当
- 家族手当・子供手当・扶養手当
- 技能手当・教育手当・特殊作業手当
- 住宅手当・地域手当
- 皆勤手当・精勤手当などの奨励手当
- 休業手当(「労働基準法」第26条。事業主の都合で休業した場合に支給)
このように給料の全額に残業手当が含まれることから雇用保険料の金額は毎月変わります
社会保険料が変わるとき。定時決定編
つぎは狭義の社会保険料、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料についてです
健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料に関しては実際の給料の金額でなく、実際の給料の金額を標準報酬月額表に当てはめて金額を決定します
標準報酬月額表に関しては協会健保のHPにありますので、興味のある方はそちらでご覧ください
協会健保HP ← クリックすると別のページに飛びます
その標準月額報酬表に、大阪で総支給額30万円の給料をもらっている人を当てはめてみると、22等級にあたることが分かります
この22等級は29万円~31万円の人が当てはまりますので、狭義の社会保険料に関して言えば給料が29万円でも31万円でも社会保険料として同じ金額を支払うことになります
この給料というのは税引き前の給料で、日本年金機構のHPにはこのようにかかれています
(1)報酬
厚生年金保険で標準報酬月額の対象となる報酬は、次のいずれかを満たすものです。
(ア)被保険者が自己の労働の対償として受けるものであること。
(イ)事業所から経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計にあてられるもの。(2)報酬の例
厚生年金保険で標準報酬月額の対象となる報酬は、基本給のほか、能率給、奨励給、役付手当、職階手当、特別勤務手当、勤務地手当、物価手当、日直手当、宿直手当、家族手当、休職手当、通勤手当、住宅手当、別居手当、早出残業手当、継続支給する見舞金等、事業所から現金又は現物で支給されるものを指します。
なお、年4回以上支給される賞与についても標準報酬月額の対象となる報酬に含まれます。
<日本年金機構HPより抜粋>
さっきの雇用保険と同じような考え方ですね
標準報酬月額の決定は通常年一回行われ、その年一回の標準報酬月額の決定を定時決定といいます
この定時決定については日本年金機構のHPにはこのように書かれています
毎年7月1日現在で使用される事業所において、同日前3か月(4月、5月、6月、いずれも支払基礎日数17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上)に受けた報酬の総額をその期間の総月数で除して得た額を報酬月額として標準報酬を決定し、9月から翌年8月までの各月の標準報酬とする。
<日本年金機構HPより抜粋>
要は7/1に働いている会社で4・5・6月平均を出して標準報酬月額業に当てはめるということです
ここで決まった標準報酬月額は9月から来年の8月まで使用します
このことを社会保険料(狭義)の定時決定といいます
社会保険料が変わるとき。随時改定編
定時決定の段落の説明に通常年一回と書きましたが、例によってこの制度にも例外があります
それが随時改定の制度です
随時改定については日本年金機構のHPではこう説明されています
被保険者の報酬が昇給・降給等で固定的賃金に変動があり、継続した3か月間(いずれも基礎日数17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上)に受けた報酬総額を3で除して得た額が従前の標準報酬の基礎となった報酬月額に比べて「著しく高低を生じた場合」において、厚生労働大臣が必要と認めたときに改定する。
<日本年金機構HPより抜粋>
さっきの定時決定とよく似ていますが、こちらは季節を問わず給料の固定的賃金に変更があった場合に行われます
そして行われる場合は「著しく高低を生じた場合」に限られ、この「著しく高低を生じた場合」というのは標準報酬月額表で2等級以上の差が生じた場合となります(給料が著しく高額であったり、低額である場合などの例外あり)
固定的賃金に変更があっても標準月額報酬表で二等級以上の変更が無ければ標準報酬月額に変更はありません
随時改定が行われる場合は固定的賃金の変動があってその後三ヶ月(給与支払い基礎日数が17日以上)の平均が標準報酬月額表で二等級以上動いた場合です
随時改定の注意点
随時改定の注意点は固定的賃金に変更があった場合に行われるという点です
なので残業代が多かったので二等級以上動いたということであれば、随時改定は行いません
しかし、固定的賃金に変更があって、その後3ヶ月が非常に残業代が多かった場合は要注意です
この場合、残業代を含めた金額で標準報酬月額を決定するので、随時改定で決定される標準報酬月額が非常に高くなってしまう場合があります
標準報酬月額が上がるともちろん社会保険料(狭義)も上がります
ここでタイトル回収ですが、引越しをすると給料が上がったり下がったりする場合があるのはこの仕組みが関係しています
引越しをすると通勤代が変わると思いますが、その通勤代は固定的賃金なのです
なので、引越したしこれからバリバリ働くぞー! と残業を頑張ってしまうと、いつも以上に高い残業代を含めた金額で標準報酬月額が決定されることになり、社会保険料が不当に高くなってしまう場合があります
あとは家族手当も固定的賃金なので、子供が生まれたからバリバリ働くのは……まあ、4ヶ月目からしたほうがいいかもしれませんね!
この記事のまとめ
社会保険料が変わるとき。雇用保険料編
給料の金額によって随時変わる
社会保険料が変わるとき。定時決定編
社会保険料(狭義)は通常一年に一回標準報酬月額が決定され、その金額に応じた等級の保険料を支払う
社会保険料が変わるとき。随時改定編
社会保険料(狭義)は固定的賃金が変更された場合、随時改定される
まとめ
社会保険料は従業員の給料に関わる部分です
誤解が生じないように慎重に対応しましょう
分からない部分は社労士などの専門家や弁護士。その保険料を管轄する部署に問い合わせて正確に答えるようにしましょう
今回は以上となります
この記事が皆様のお役に立てれば幸いです