おはようございます、社労士の有馬です
仕事を辞めるというのは中々勇気がいることですが、だからといって辞めると言われたものを撤回されるのも困り者です
タイトルのような次の日というのならまだしも後任も決まって代わりの人員を採用した後に撤回ともなろうものなら
経費も手続きも無駄にかかってしまうということになります。そんな場合でも退職の撤回を認めなくてはならないのでしょうか
今回はそんなトラブルになりやすい退職について解説していきたいと思います
働き方改革が始まって労働者の権利に対しての目が厳しくなっています。労務管理担当者のツボともいうべき退職についての事例を一緒に押さえていきましょう
退職に関する法律的なこと
労働者の権利に関する法律で真っ先に思い浮かぶ法律といえば労働基準法ですが、残念ながら労働基準法に今回のような退職に関する規定はありません
しかし、民法521条で定められている内容が今回のような事例では参考になるかもしれません
第521条(承諾の期間の定めのある申込み)
- 承諾の期間を定めてした契約の申込みは、撤回することができない。
- 申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う
少し分かりにくいかもしれませんので例を挙げると
例えば7月までに辞めると言った人が居た場合にそれは撤回できないということになるでしょう
つまり民法521条に照らし合わせれば一度退職する(期間を決めて)と言った場合は撤回できないことになります
しかし裁判ではこういう判例も出ている
ところが一方で田辺鉄工所事件の判例ではこのような判例も出ています
主文や要旨は割愛しますが、要約すると『退職の意思が使用者に到達前であるなら撤回できる』とされています
民法521条の規定と何が違うのかというと
使用者、つまりここでは人事裁量権を持つ社長(もしくは近い人物)に退職の意思が通っていなければ撤回できるとされているのです
仮に社員が上司の課長に一月後に辞めると言っていても、その一月後に課長が社長にその社員の退職について処理していなければ退職の意思は撤回できるということになります
後任が決まっていて新しく人員を補充していたとしても、その退職の撤回を拒否することは難しいということになってしまうというわけです
このようなトラブルをどう防いでいくのか
退職の問題は生存権に関わる部分ですので使用者側に厳しい判断が下される場合が多くなっています
なのでこのようなトラブルは未然に防いでおく必要があるのですが、ではいったいどうやって防げばいいのでしょうか
まず考えられるのは退職の意思を社員が示してきた時点で使用者に意思を伝えたとする方法でしょう
例えば就業規則に所属上長に退職の意思を示した場合、使用者にも退職の意思を示したものとするなどと記しておくのが重要です
もちろん社員が退職の意思を撤回してきて会社側もそれに同意した場合は撤回できるという項目を設けておくべきなのは言うまでもありませんね
まとめ
労務関係のトラブルに関しては日ごろのメンテナンスで防げるものが非常に多いです
特に就業規則はそのトラブルを防止するのに最も役立つものなので、作成義務のない10人未満の事業所でも備えておくのが安心ですね
就業規則の作り方は過去の記事で紹介していますので是非そちらもご覧ください
もちろん当事務所や他の社労士さんに依頼して作ってもらっても大丈夫です
それでは今回は以上となります
この記事が皆様のお役に立てれば幸いです