退職のルールを社労士が法律の観点から解説します

おはようございます、社労士の有馬です

人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろという発言をされたのは小泉純一郎元総理ですが、そういうわけで(どういうわけだ)長い人生退職することも一度や二度あろうかと思います

しかし、めったに起きないことは事実で、特に従業員の少ない会社等は、いきなりそういわれると担当者は戸惑ってしまうこともあろうかと思います

そんな時、どうすればいいのか

退職のルールはどうなっているのか社労士が法律的な観点から解説していきたいと思います

もくじ

この記事を書いている私は社労士として4年ほどの経験があります

退職に関しては色々なうわさが飛び交っていて、ネットで調べても何が本当か何が嘘か分からないようなところがあります

退職は労働者の大きなライフイベントに関わっていることも多いですから、ここでのミスは後々致命的なものを引き起こす可能性があります

退職についての正しい知識をこの機会にきちんと身に着けておきましょう

※補足

この記事では労働者から仕事を辞めるという届(退職届)が出されたときの話で、会社が労働者に通知する解雇については触れていません

今回解説する退職と、会社から従業員に通知する解雇は別物ですのでご注意ください

退職のルール。全体像の話

退職のルールの全体像の話をしたいと思います

退職についてまず考慮にいれるべき法律は日本国憲法です

そうなんです。実は退職に関しては労働基準法でなく、日本国憲法に規定があるんです

その憲法とは以下の通りです

何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

日本国憲法第十八条

何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

日本国憲法第二十二条

いわゆる奴隷労働の禁止と職業選択の自由について書かれた項目ですね

これにより、労働者は自分の意に沿わない労働を拒否することができ、また、職業を自由に選べることが保障されているわけです

すなわち、日本国憲法的には退職したければ自由にしていいですよということです

しかし、昨日まで来ていた従業員が突然会社に来なくなれば、会社も困りますし、同僚やお客さんも困ります

そこで、円満な退職を助けるべく、民法でその詳細が決められています

退職のルールはこの民法の規定に基づいて判断するということになります

退職のルール。無期雇用編

退職のルールは無期雇用(期間を定めない契約で雇用されている労働者)と有期雇用(期間の定めのある契約で雇用されている労働者)で変わっています

この段落では無期雇用に労働者について解説していきます

無期雇用の労働者については民法では3つのケースについて定められています

日給・日給月給制・時給制の人

まずは一つ目です

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

民法627条

何が書いてあるのかというと、退職するときは退職したい日の2週間前までに申し出ること、と書かれています

この説明を受けると、就業規則には一ヵ月前と書かれてあるけどどうすればいいの? という疑問を持つ人もいらっしゃるでしょうが

この場合は、就業規則よりも民法の規定が優先されますので、民法の規定に従うということになります

しかし、労働者が就業規則どおり一ヵ月後に辞めたいということであれば、2週間にこだわる必要はありません

法律は最低限度の事を定めているだけなので、それ以上の事をする分には問題ありません

ちなみに、民法よりも日本国憲法の方がもちろん優先されるので、労働者側は2週間待たずに退職することは可能です

ですが、民法の規定に違反しているので、裁判で損害賠償請求をされてしまう可能性があります

退職は労働者と会社の双方に関わることですから、なるべく円満にできるようお互いがお互いを思いやる必要があるということですね

月給制の人

続いて二つ目は月給制の人について定められています

期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

民法627条 第二項

要は来月退職したければ月の前半に退職を申し出ること、と書かれています

月の後半に退職を申し込んだ場合は翌々月に退職することになります

6ヶ月以上の期間によって報酬が定められている人(年俸制・半期年俸制の人)

三つ目は年俸制や半年ごとの半期年俸制で働いている人たちの規定です

六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三カ月前にしなければならない

民法627条第三項

この規定は分かりやすいですね

6ヶ月以上の期間によって報酬が定められている人は3ヶ月前に申し出ることと書かれています

退職を申し出てきた人がどういう雇用形態で働いているのかを把握することが重要です

退職のルール。有期雇用編

無期雇用の退職のルールについて解説したところで、続いて有期雇用の退職のルールについて解説していきます

有期雇用の退職のルールについて規定された法律は以下の通りです

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う

民法628条

長々とした文章を読んだ人ならお分かりでしょうが、この規定は実は有期雇用の人の退職のルールを規定したものではないのです

ではなぜ、この規定を載せたかというと、有期契約の人は基本雇用契約期間が終わるまでは退職できないからです

退職するには上の民法628条にあてはまるやむを得ない事情がある場合のみです

やむを得ない事情とは病気であったり、違法行為を強要された場合ですね

繰り返しになりますが、民法の規定よりも日本国憲法の方が優先されるので、やむを得ない事情がなくても退職することは可能なのですが、しかし、その場合は損害賠償請求される可能性があるので注意してください

なお、契約から1年経過するといつでも退職できるようになります

これは労働基準法の137条に規定されています

期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が1年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第14条第1項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成15年法律第104号)附則第3条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる

まとめ

退職のルールについて解説しましたがいかがだったでしょうか

法律がたくさん出てきてややこしく思ったかもしれませんが、まとめると以下のようになります

まとメモ

無期雇用者の場合は退職する2週間前に申し出(申し出されてから2週間後に退職

有期雇用者の場合はやむを得ない事由がない限りは雇用契約期間内は退職することはできない

ただしどちらも日本国憲法の規定が優先されるので、いつでも退職自体は可能だが、労働者側は損害賠償請求される可能性がある

ほとんどのケースはこれで対応できるはずです

これに当てはまらず、判断がつかない場合は専門家に相談してみましょう

それでは今回は以上となります

この記事が皆様のお役に立てれば幸いです