転勤って断れないの? 人事異動に関する法律的なこと(会社の対応編)

おはようございます、社労士の有馬です

4月は人事異動の季節ですね。そろそろ人事考課について考えている会社もあるかもしれませんが

しかし、社員側に立ってみると、部署異動くらいならいいですが、住居の変わる転勤が伴うとなると、あまり嬉しいものではありません

役職が上がるにしても元のポジションでいいから今の場所にいさせてくれ、というのが本音な人も結構多いのではないでしょうか?

と、そこで当然湧き上がってくる疑問としては転勤って断れないの? ということです

実はこのあたりはトラブルになりやすい部分で、トラブルになりやすいということは会社側も脇が甘い部分だということでもあります

労務トラブルは事前の準備で9割カットできます

ということで私と一緒に転勤について学んでいきましょう

人事異動とは

人事異動とは部署の移動、転勤、役職の任免、職種変更、応援の総称のことですが

このあたりは法律ではどう決まっているのでしょうか

残業や休日のように人事異動に関しても法律で決まっているのでしょうか

実は人事異動に関しては法律で明確に決まってることはありません

人事異動に関しては就業規則と労働契約書(雇用契約書)で決められます

つまり、会社側で自由に決めることができるのです

とはいえ、もちろん無茶苦茶な規則を設けることはできないですが

そのあたりはあとでお話しする東亜ペイント事件の部分でお話しようと思うのですが

その前に就業規則では具体的にはどのように決めればよいのかを見ていきましょう

モデル就業規則にはこう書かれている

10人以上従業員のいる会社には就業規則の作成が義務付けられています

なので、就業規則があるという会社は多いと思いますが

大企業や大企業に近い中小企業以外ではモデル就業規則を使っているという会社も多いかと思います

モデル就業規則というのは厚生労働省が出している就業規則のモデルのことですが

そのモデル就業規則には人事異動に関してはこのように記載されています

(人事異動)
第8条 会社は、業務上必要がある場合に、労働者に対して就業する場所及び従事する業務の変更を命ずることがある。
2 会社は、業務上必要がある場合に、労働者を在籍のまま関係会社へ出向させることがある。
3 前2項の場合、労働者は正当な理由なくこれを拒むことはできない。
<平成30年1月 モデル就業規則より引用>

非常にシンプルですね

要約すると、会社は転勤を命じることができて、労働者は正当な理由が無ければこれを拒むことができないとかかれているのですが

もちろんこれでもいいのですが、トラブルを予防するためにはもう少し具体的にしておきたいところです

就業規則で争点となるのは職権濫用や性別が多いのですが

その点で言えば、モデル就業規則の『人事異動』に記載された事項では一方的過ぎて職権濫用を問われる場合があります

そのことが良くわかるのが『東亜ペイント事件』の判例です

非常に長いのでここには載せませんが

要約すると、転勤命令を受けた社員が家庭の事情で転勤命令を拒否したところ解雇され、その解雇の無効を申し立てたという事件です

裁判事態は労働者側の敗訴で終わったのですが

大事なのは判決文の内容で

まず、転勤は企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは業務上の必要性の存在を肯定すべき

とされ

当該転勤命令が不当な動機・目的をもってなされたものであるときもしくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特別の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではないというべきである

とされています

要約すると、転勤命令は企業を運営する上で合理的な必要性があり、なおかつ転勤者に多大な不利益がないようにしなければならないようにしなければならない

ということですね

特に『ネスレジャパンホールディング事件』や『ケンウッド事件』などでは通常甘受しがたい著しい不利益の部分が争われ

転勤では特にこの部分を重要視して就業規則を作成していくことが求められるといえるでしょう

規定しておくべきこと

これらを踏まえて具体的には就業規則はどのように作成していくべきなのでしょうか

まず、モデル就業規則の『人事異動』の項目に加えて、どのようなことが人事異動に当てはまるのかを定義しておく必要があるでしょう

モデル就業規則では人事異動として一括にまとめられていますが、人事異動には配置転換、転勤、役職の任免、応援など他にも会社によって、人の異動に関する事項が様々あると思います

それらをきちんと定義して、もしトラブルになった場合、どの事項に当てはまるのかを明確にしておく必要があると思います

次に、通常甘受すべき云々の話ですが

転勤という労働者に負担を与える可能性のある命令を下す場合、会社側もそれに対して配慮をするという一文が必要でしょう

例えば先ほど上げた『ネスレジャパンホールディング事件』では労働者が転勤できない事情を話したにも関わらず、その事情を聴取し、考慮しなかったという趣旨のことがかかれてあり

逆に『ケンウッド事件』では会社側が転勤拒否をした従業員と話し合いの場を設けているというようなことが書かれています

最近は特に介護中の従業員や子育て中の従業員に対しての配慮が求められる傾向がありますので、特にこの転勤に関して不利益の軽減に配慮するという部分は重要かと思います

就業規則にそのことを記載し

万が一のために、転勤に際しては転勤する従業員に事情を詳しく聞き、どのように配慮したのかを文章に残しておくといった方法をとるのがよいかと思います

まとめ

労務関係のトラブルは予防が大切です

特に就業規則はきちんと作成しておかないとトラブルになりやすいので、注意しておきたい部分ですね

それでは今回は以上となります

この記事が皆様のお役に立てれば幸いです