おはようございます、社労士の有馬です
遅刻三回で欠席というのは就業規則でよく見る罰則ですが
確かに遅刻は悪なのですが、この罰則を実際にやってしまうと二つの法律に触れてしまいます
働き方改革が実施されるとコンプライアンス違反に厳しくなることが予想されますので、今のうちに危なそうな規則には手を入れておくといいでしょう
今回は就業規則のツボとして、遅刻三回で欠席が非常に危ない理由についてお話したいと思います
他の罰則でも応用できるので自社の就業規則の見直しに是非参考にしてみてください
遅刻と減給の関連性二種
遅刻三回で欠席扱いにするという罰則を設けている会社は多いのではないでしょうか
しかし、この遅刻三回で欠勤扱いにするというのは言い換えると遅刻三回で一日分の給料を減給するという意味になります
この減給というのがくせもので、実は法律で厳しく定められています
その法律というのがこの二つです
労働契約法第6条
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
労働基準法91条
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
いわゆるノーワーク・ノーペイの原則と減給についての規制ですね
ではこの2つがどう関係してくるのでしょうか
一つ一つ見ていきましょう
労働契約法第6条。ノーワーク・ノーペイの原則について
労働契約法第6条。ノーワーク・ノーペイの原則とはざっくりいうと働いた時間に対して賃金を支払えという意味で、逆を返せば働いていない時間は賃金の支払いは必要ないということになります
これを遅刻のケースに当てはめてみると、1時間遅刻した場合に1時間分の給与を差し引くのは問題ないということになります
この控除は減給ではなく、ノーワーク・ノーペイの原則に基づいた控除です
しかし、遅刻3回で欠席にするという扱いは、例えば1時間の遅刻が3回あった場合、通常の一日の労働時間8時間をさっぴく。つまり
8時間 - 3時間 = 5時間
ということで、5時間分に賃金を支払っていないことになります
この5時間分の賃金に関しては働いているのに支払われていない賃金ということなので、減給ということになります
となると、この5時間に関しては労働基準法91条の制限を受けるのですが、具体的にはどのような制限なのでしょうか
労働基準法91条についてみてみましょう
減給は一日分の賃金の半額、もしくは一月の給料の10分の1まで
労働基準法91条はこんな感じになってます
労働基準法91条
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
ざっくり言い換えると減給は一日分の賃金の半額、もしくは一月の給料の10分の1までということですね
ここで先ほどの例に戻るのですが、5時間の減給というのは通常の一日の労働時間、8時間の半分以上になっています
つまり、この労働基準法91条に引っかかることになってしまいます30分の遅刻が三回ならなおさら
逆に5時間の遅刻が3回なら労働基準法91条にはひっかかりませんが、この場合はノーワーク・ノーペイの原則に基づいて控除すればいいだけですね
遅刻対策をどうするか
では減給処分ができないとなれば遅刻者に対してはどう対応すればいいのでしょうか
叱責や反省文でしか対応ができないのでしょうか
確かに遅刻者に対しての対応はそれくらいになるのでしょうが、少なくとも3日遅刻で1日分の給与の減給というのは違法性が高いでしょうが
しかし、実際遅刻が発生してしまうと業務も滞りますし、会社のモラールも低下してしまうことでしょう
なので、実務的には別の部分での対応になるかと思います
例えばボーナスや人事考課で差をつけることになるでしょう
賃金制度や賞与の部分に具体的にどの部分を評価して決めるということを定義しておけばいいですね
その際、賞与は賃金扱いの賞与になっていないことが重要です
賃金扱いの賞与だと結局減給になってしまいますからね
賃金扱いの賞与に関しては過去の記事で紹介していますので、そちらをご覧ください
賞与小噺。管理職以上なら知っておきたいこと【二種類の賞与について】
まとめ
従業員に関するコンプライアンス違反は社内倫理的にも金額的にも高くつく傾向があります
特に就業規則は全ての土台になる部分ですから徹底的に管理しておきたいですね
それでは今回は以上となります
この記事が皆様のお役に立てれば幸いです