おはようございます、社労士の有馬です
最近懲戒処分の記事ばかり書いていて性格が悪いのではないかと思われそうですが(実際そんなによくない)懲戒処分は特にトラブルになりやすい項目ですし、社労士としても就業規則作成で最も神経を使う部分です
会社の個性の出る部分であり、職権濫用とのバランスの難しい部分ですので労務管理に携わる人には欠かせない知識です
社内からはあまりよく思われないかもしれませんが、懲戒処分は会社を守る上で最も重要と言える部分なので、勉強するに越したことない知識です
そんな懲戒処分ですが、今回は実際どのような懲戒処分があるのかをみていきたいと思います
就業規則を作成・見直しをする場合には知っておくべき内容ですので、是非最後までお付き合いください
軽・中・重に分かれる7つの懲戒処分
懲戒処分は軽・中・重のグレードがあり、6つの内容に分かれています
その処分の内容は軽い順から、けん責、減給、出勤停止、降格、論旨退職、懲戒解雇です
どれも一度は耳にしたことのある名称だと思いますが、内容について詳しく知っている方は以外に多くないのではないでしょうか
そしてこの順番を見て意外に思った人もいるかと思います
何故この順番に処分が重いのか。内容も交えて一つ一つ解説していきましょう
グレード:軽。けん責
けん責はいわゆる始末書のことです
最も軽い処分で、人事考課の考慮材料として使用することが処分の主な内容です
賃金などの直ちに影響が無いことから最も軽いグレードの処分といえます
グレード:軽。減給
減給はけん責の次に重い懲戒処分です
減給は労働基準法91条で一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならないと決まっているので、処分を行う際はこの法律に基づいた金額を減給することになります
減給については過去の記事でも解説していますのでよければそちらもご覧ください
遅刻三回で欠席扱いは非常に危ない。その理由を社労士が解説します【減給】
グレード:中。出勤停止
出勤停止は文字通り労働者の就労を一定期間禁止する懲戒処分です。説明するまでもないですね
その出勤停止ですが、減給よりも重いグレードに分けられているのを疑問に思った方がいるかもしれません
その理由というのは出勤停止の方が減らされる賃金が多いからです
賃金が減るということは生存権が脅かされることにつながるので重い処分ととられるのです
前回の記事で懲戒処分三つの原則について解説しましたが、そのうちの相当性の原則にあたる部分ですね
ちなみに出勤停止での賃金カットは減給ではなく、ノーワーク・ノーペイの原則に基づく控除です
減給なのかノーワークノーペイの原則に基づく控除なのかは管轄する法律が違うので、きっちりと理解しておいたほうがいいでしょう
過去の記事で解説していますのでご興味ご関心おありの方はそちらもご覧ください
遅刻三回で欠席扱いは非常に危ない。その理由を社労士が解説します【減給】
グレード:中。降格
降格は労働者の等級を引き下げる処分のことです
職能資格制の賃金制度で例えるなら上級9級から上級8級に降格といった処分ですね
降格処分は一時的ではなく、恒久的に賃金が下がることになります。なので出勤停止よりも重い処分とされています
降格は社内での立場を下げることになるので重に近い中の厳しい処分となります
処分を行う際は相当性の原則に合致しているか注意したいですね
ちなみに降格に伴う賃金のカットは減給とは別なので、労働基準法91条の制限を受けませんが、カットしすぎると生存権の侵害や職権濫用などの別の問題が生じます
繰り返しなりますが、相当性の原則に合致しているかは注意ですね
グレード:重。論旨退職
論旨退職は労働者による自発的な退職を促す処分です
実質一番重い処分といえますので、相当何かをやらかした場合に行う処分となります
例えば横領とか暴力沙汰とかですね。いわゆる犯罪と呼ばれる行為を行った場合に下す処分となります
ちなみに論旨退職は従業員による自発的な退職を促す処分ですので、従業員が拒否することもできます
その場合は次の懲戒解雇となります
論旨解雇に従った場合は就業規則で定めてあるとおり通常の退職と同じように扱います
グレード:重。懲戒解雇
懲戒解雇は論旨退職とちがい、使用者が労働契約を一方的に終了させる処分です
しかし、実際行うにはかなりハードルが高く、生存権を重篤に脅かすことからかなり厳しく制限されています
実務的にはほとんどこの処分を行うことはないでしょう
なぜなら例えば明らかな横領があった場合はもちろん懲戒解雇に相当するのですが、横領の罪が確定するまでは時間があり、それまでは通常通りの雇用を続けなければならないからです
出勤停止処分も同時に行えばノーワーク・ノーペイの原則により賃金を支払う事葉ありませんが、出勤停止処分にし続けることもそれはそれで問題があります
なによりも社会保険料等の支払いは免除されませんので、そういったことが発覚したと同時に論旨退職を促すことがほとんどでしょう
判例を見るとつくづく思うのですが日本で懲戒解雇を行うのはかなりハードルが高くなっています
まとめ
懲戒処分は法律以外で同じ人間に罰則を与えることができるものなのでかなり厳しく見られがちです
トラブルがおきる前にきっちりと対処しておきたいですね
それでは今回は以上となります
この記事が皆様のお役に立てれば幸いです