前回の記事の続きです
平成30年7月6日に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が公布されましたが、この法律で何が変わるのか詳しく解説していきます
今回は不合理な待遇差をなくすための規定の整備。パートタイム労働者・勇気雇用労働者と派遣労働者について解説します
この記事の内容
労働時間法制の見直し
雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
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- 不合理な待遇差をなくすための規定の整備 ← この記事
- ①パートタイム労働者・有機雇用労働者 ← この記事
- ②派遣労働者 ← この記事
- 労働者に対する、待遇に関する説明義務の強化
- 行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備
- 不合理な待遇差をなくすための規定の整備 ← この記事
この記事を書いている私は勤務・開業合わせて社会保険労務士を4年ほど
働き方改革で何が変わるのかを詳しく解説していきます
※長くなるので何回かに分けて解説します。リンクを張りますので目的のページがあればそちらをご覧ください
不合理な待遇差をなくすための規定の整備
①パートタイム労働者・有機雇用労働者
パートタイム労働者・有期雇用労働者の不合理な待遇差をなくすための既定の整備についてまず解説をしていきます
「均衡待遇規定」「均等待遇規定」がパート・有期・派遣で統一的に整備されました
「均衡待遇規定」「均等待遇規定」とは以下のようなものです
均衡待遇規定
- 職務内容(業務の内容+責任の程度)
- 職務内容・配置の変更範囲
- その他の事情の相違を考慮して不合理な待遇差を禁止
均等待遇規定
- 職務内容(業務の内容+責任の程度)
- 職務内容・配置の変更範囲が同じ場合は差別的取り扱い禁止
現在、パートタイム労働者と有期雇用労働者では「均衡待遇規定」「均等待遇規定」に差があります
しかし、改正後はパートタイム労働者、有期雇用労働者のどちらにも規定が適用されるようになり、さらに均衡規定が明確化され、ガイドラインが策定(予定)され、既定の解釈が明確に示されるようになりました
【改正前→改正後】○:規定あり 三角:配慮規定 ×:規定なし ◎:明確化
パート | 有期 | 派遣 | |
均衡待遇規定 | ○ → ◎ | ○ → ◎ | △ → ○+労使協定 |
均等待遇規定 | ○ → ○ | × → ○ | × → ○+労使協定 |
ガイドライン | × → ○ | × → ○ | × → ○ |
均衡待遇規定の明確化とは以下の事をさします
均衡待遇規定の明確化
それぞれの待遇に関するガイドラインは現在(2018年7月27日現在)では「同一労働同一賃金ガイドライン案」となっていますが基本的な考え方は同一労働同一賃金の考え方です
例えば基本給の場合
- 職業経験・能力に応じて
- 業績成果に応じて
- 勤続年数に応じて
といった三つの要素で構成されているとしたら
同一であれば同一の支給を求め、一定の違いがあった場合には、その相違に応じた支給を求めるということです
この同一、相違に関しては厳格になっていて
無期雇用フルタイム労働者と有期雇用・パートタイム労働者の賃金の決定基準・ルールの違いがあるときは、「将来の役割期待が異なるため」という主観的・抽象的説明では足りず、賃金の決定基準・ルールの違いについて、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の客観的・具体的な実態に照らして不合理なものであってはならない
<岐阜労働局 働き方改革法律の概要詳細版より引用>
とされています
ざっくりいうと、パートだから正社員とは給料が違うでしょ、という理屈ではなく、ちゃんと仕事の内容や能力で給料を決めてくださいね、ということにます
役職手当や通勤手当、賞与も同様です。家族手当や住宅手当等も労使で議論していく必要があるでしょう
②派遣労働者
現在、派遣労働者と派遣先労働者の待遇差に関しては配慮義務規定のみとなっていますが、こちらもパートタイム労働者、有期雇用労働者と同じように均等・均衡規定が追加されます
現在
改正後
- 下のいずれかを確保することを義務化します
- 派遣先の労働者との均等・均衡待遇
- 一定のお湯権を満たす労使協定による待遇
※併せて、派遣先になろうとする事業主に対し、派遣労働者の待遇に関する派遣元への情報提供義務を新設します。
- 派遣先事業主に、派遣元事業主が上記1・2を順守できるよう派遣料金の額の配慮義務を創設
- 均等・均衡待遇規定の解釈の明確化のためガイドライン(指針)お策定。根拠を規定
不合理な待遇差をなくすための規定の整備への対策
働き方改革で取り上げられた3つの問題のうちの一つ、正規と非正規の差の是正について取り上げた改正かと思われます
働き方改革で取り上げられた三つの問題について解説している記事はこちら
同一賃金同一労働の考え方が示され、それに関する義務が決定された改正といえるでしょう
パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者を雇用している会社は、賃金制度を明確にし
- どの要素に対して給料を支給しているのか(経験、業績、勤続年数等)
- どの作業に対していくら支給しているのか(特殊作業手当、危険手当等)
- 何に対しての手当なのか(通勤手当、家族手当、住居手当等)
- 賞与はどのような条件で支給されるのか
等、明確に決めておく必要があるでしょう
給料や手当の条件を明確にしておかないと、思わぬ経費が出てしまう事が考えられます
パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者用の就業規則を作成するなどして、職務内容や賃金、責任を明確にしておくことをお勧めします
この改正の施行期日は2020年4月1日
中小企業におけるパートタイム・有期雇用労働法の適用は2021年4月1日です
中小企業の定義
業種 | 中小企業法の定義 |
製造業・その他 | 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は 常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人 |
卸売業 | 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は 常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人 |
小売業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は 常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人 |
サービス業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は 常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人 |
この記事のまとめ
同一労働同一賃金の考え方は日本の労働環境にはなじまないものとされてきました
なぜなら新入社員の頃は給料が安く、勤続年数に合わせて給料が上がっていくという終身雇用の制度の下では、新入社員と勤続年数20年目の社員が同じ仕事しているということはよくあることだったからです
しかし、今回の改正で少なからず同一労働同一賃金の考え方が取り入れられたことを鑑みるに、少子高齢化や日本の社会全体の高齢化の問題もあり、日本の労働環境は今、大きく変わらざる得ない時期にきているのだと実感させられます
今回は以上となります
繰り返しになりますがこの改正の施行期日は
2020年4月1日
中小企業におけるパートタイム・有期雇用労働法の適用は2021年4月1日です
この記事が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです