おはようございます、社労士の有馬です
ここ最近私が子供の頃に活躍していた方の訃報をよく耳にします
私の生まれた世代はベビーブーム世代の次の次の世代でして、いわゆるゆとり教育が取り入れられはじめた時代でもあります
少子高齢化社会も進んでいくことですし、方々で跡継ぎ問題、事業継承問題という言葉も耳にします。これからこの問題はますます大きくなっていくことでしょう
さて、そんな跡継ぎ問題ですが、今回は息子(娘)に後を継がせた場合、社会保険的にはどういう問題が発生するのでしょうか。
跡継ぎの息子(娘)は労働者なのでしょうか、労働者ではないのでしょうか?
今回はこの問題についてケーススタディ的に社労士が解説します
もくじ
- 一人親方(社長のみ)の会社の事業継承
- 社員がいる会社の事業継承
この記事を書いている私は社労士として4年ほど
最近話題になっている事業継承問題に社労士の視点でどういうことが起きるのか解説していきたいと思います
一人親方(社長のみ)の会社の事業継承
まずは一人親方(社長のみ)の会社の事業継承についてみていきましょう
いわゆる職人と呼ばれる方はこのパターンが多いかと思います
その場合、息子(娘)に仕事を教えて、一人前になってから引退という流れかと思いますが、そうなると、息子(娘)は社会保険や労働保険の加入は必要なのでしょうか
一人親方(社長のみ)の会社の事業継承の社会保険
まずは厚生年金・健康保険(協会・組合健保)から見ていきましょう
年金・健康保険に加入義務があるのは法人か5人以上の従業員がいる会社です
今回の場合は社長と息子(娘)のみの会社ですので、厚生年金・健康保険の加入義務は発生しません
社会保険に関しては社長、息子(娘)ともども国民年金と国民健康保険に加入することになります
一人親方(社長のみ)の会社の事業継承の労働保険
次は労災保険と雇用保険について考えていきます
まず労災ですが、労働者が一人でもいれば加入義務があります
しかし、同居の親族の場合は労災の加入がない場合があります
一般労働者(親族以外の労働者)を使用する事業のみ、次の条件を満たしていれば、労働者となります。
同居の親族は、事業主と居住、及び生計を一にするものであり、原則としては労働基準法上の「労働者」には該当しませんが、同居の親族であっても、常時同居の親族以外の労働者を使用する事業において、一般事務、又は現場作業等に従事し、かつ次の条件を満たすものについては、一般に私生活面での相互協力関係とは別に独立して労働関係が成立していると見て、労働基準法の「労働者」として取り扱います。
(1) 業務を行うにつき、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること。
(2) 就労の実態が当該事業場における他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること。特に、始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等、また賃金の決定、計算及び支払方法、賃金の締切及び支払の時期等について就業規則その他これに準ずるものに定めるところにより、その管理が他の労働者と同様になされていること。
厚生労働省HPより引用
まとめると、別々の仕事していて、他の労働者とは別の給与形態で賃金をもらっていると労働者ではないということです
とはいえ今回のケースでは社長と息子(娘)しかいないので、労災保険には加入しなければならないということになります
次に雇用保険ですが、雇用保険の加入条件は以下のようになっています
雇用される労働者は、常用、パート、アルバイト、派遣等、名称や雇用形態にかかわらず、次のいずれにも該当する場合には、原則として被保険者となります。
(1) 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
(2) 31日以上の雇用見込みがあること
ただし、次に掲げる労働者は除かれます。(1) 季節的に雇用される者であって、次のいずれかに該当するもの
・ 4か月以内の期間を定めて雇用される者
・ 1週間の所定労働時間が30時間未満である者(2) 昼間学生
(3) 65歳以上で新たに雇用される者
厚生労働省HPより引用
ただし同居の親族の場合は雇用保険の被保険者になりません
なので、もし息子(娘)が同居の親族であれば雇用保険に加入する必要はありません
別居している場合は加入義務が発生するので注意が必要です
この段落のまとめ
年金・健康保険(協会健保) → 加入義務なし
労災保険 → 加入義務あり
雇用保険 → 同居の場合は加入義務なし。別居の場合は加入義務あり
社員がいる会社の事業継承
個人事業主(社長のみ)の事業継承について解説したところで、従業員がいる場合の跡継ぎの息子(娘)の場合について解説します
社員がいる会社の事業継承の社会保険
こちらもまずは厚生年金と健康保険(協会健保)から見ていきましょう
この場合も上で解説した社会保険の適用条件は同じで
法人か、5人以上の従業員がいれば強制加入となります
なので社員がいる場合でも法人でなく、個人事業主で5人未満の従業員数であれば厚生年金・健康保険(協会健保)ではなく、国民年金と国民健康保険に加入することになります
法人か、5人以上の従業員がいればもちろん厚生年金と健康保険(協会健保)に加入する必要がでてきます
社員がいる会社の事業継承の労働保険
労災保険に関しては一人親方(社長一人)の場合と同じです
一応今回は従業員がいるのでその方と別の給与形態でしかも事業主の指揮命令を受けずに仕事をしていれば労働者に該当しない場合もありますが、そういうケースは極稀かと思います
次に雇用保険ですが、雇用保険に関しては例外が適用されるケースがあります
原則として被保険者となりません。
ただし、次の条件を満たしていれば被保険者となりますが、公共職業安定所へ雇用の実態を確認できる書類等の提出が必要となります。
(1) 業務を行うにつき、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること
(2) 就労の実態が当該事業場における他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること。特に、始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等、また賃金の決定、計算及び支払方法、賃金の締切、及び支払の時期等について就業規則その他これに準ずるものに定めるところにより、その管理が他の労働者と同様になされていること
(3) 事業主と利益を一にする地位(役員等)にないこと
厚生労働省HPより引用
今回の場合、他に従業員が存在するので、その従業員と同じ形態で賃金が支払われ、始業・終業が管理され、就業規則に従っている場合、雇用保険の被保険者に該当する場合があります
これは従業員が一人でもいれば適用されるのでご注意ください
また、別居の家族の場合は上の段落で説明したとおり、条件を満たせば雇用保険の加入義務が発生します
この段落のまとめ
社会保険 → 法人・従業員が5人以上いれば加入労災保険 → 加入義務あり
雇用保険 → 基本的には加入義務あり
まとめ
いかがだったでしょうか
従業員がいる場合といない場合とで加入義務に差がでてきます。また、別居か別居でないかでも加入義務に差が出てきます
社会保険・労働保険の加入義務に関しては年々厳しく見られる傾向にあります
もし不安に思ったなら専門家か、対応する部署に相談しましょう
今回は以上となります
この記事が皆様のお役に立てれば幸いです