みなし残業(固定残業代制度)は違法ではないがいまや採用するメリットはほとんど無い 制度編

おはようございます、社労士の有馬です

昔、就職活動をしていた名残でたまに転職サイトから求人メールが届くのですが、そのメールの求人条件に『みなし残業(固定残業代制度)を含む』と書かれてありました

みなし残業(固定残業代制度)とは毎月○時間残業したものとして給料を支払うというシステムですが、このシステムがもたらすメリットとはなんなのでしょう。またデメリットとは

みなし残業(固定残業代制度)が合法か違法かも含め、社労士が詳しく解説します

今回はみなし残業(固定残業代制度)についての解説と、みなし残業(固定残業代制度)は合法か違法かについて解説します

もくじ

みなし残業(固定残業代制度)についての解説 <-- 今回の記事

みなし残業(固定残業代制度)は合法? 違法? 詳しく解説します <ーー 今回の記事

みなし残業(固定残業代制度)を導入するメリット・デメリット

みなし残業(固定残業代制度)についての私の考え

 

みなし残業(固定残業代制度)というのは一時かなり流行ったようで、色々な会社さんが採用しているのを見かけます

ハローワークで求人を見に行った人なら目にしたことがあるでしょうし、リクナビやマイナビなどの転職サイトでもちょくちょく見かける制度でしょう

しかし、みなし残業(固定残業代制度)がどんなものか知っている人は意外にすくないのではないでしょうか。いえ、どんな制度か知っていてもなんのためにみなし残業(固定残業代制度)を採用しているのか知っている人は案外少ないのではないでしょうか

そんなみなし残業(固定残業代制度)について、社労士として勤務・開業合わせて4年ほどの経験をもつ私が解説していきたいと思います

全てを一つの記事にまとめると長くなりすぎるので二回に分けて解説します

知りたい項目だけ分かればいいとい人は上の『もくじ』から気になる部分をお読みください

結論を先に書くとみなし残業(固定残業代制度)は現在の世の中には合わない制度です

みなし残業(固定残業代制度)についての解説

長いのでこの段落では固定残業代制度に統一します

固定残業代制度というのは給料にあらかじめ何時間かの残業代を含ませて支給するシステムのことです

具体例を挙げると時給¥1,000円で一日8時間、週5日、月20日働く従業員のAさんがいるとして、この人が一ヵ月に40時間残業を行うと仮定した給料を毎月支払うといったようなことです

¥1,000 × 1.25(割増率) × 40(月のみなし残業時間) = ¥50,000(固定残業代)

 

さて、この固定残業代制度ですが、二つのパターンが考えられると思います

みなし残業時間が実際の時間よりも短い場合と長い場合です

固定残業代を支払っているのだから実際の残業時間が短かろうが長かろうが同じ残業代を支払えばいいのでしょうか?

その辺りを詳しく見ていきましょう

みなし残業時間よりも実際の残業時間が短かった場合

 

まずはみなし時残業時間よりも実際の残業時間が短かった場合です

この場合は¥50,000は固定残業代なので、月に10時間残業していようが、全く残業していなかろうが、¥50,000の額(固定残業代の額)に変わりはありません

計算してみるとこのようになります。なお、計算を単純にするために休日手当てや深夜手当ては考慮していません

月に10時間残業した場合の月給

通常の場合
給料:¥1,000 × 8 × 20 = ¥160,000
残業代:¥1,000 × 1.25 × 10 = ¥12,500
計:¥172,500

固定残業代が40時間分支払われている場合
給料:¥1,000 × 8 × 20 = ¥160,000
固定残業代:¥50,000
計:¥210,000

みなし残業時間よりも実際の残業時間が長かった場合

 

次はみなし残業時間よりも実際の残業時間が少ないケースです

この場合は固定残業代を払っているのだからこれ以上支払う必要は無いのでしょうか?

いいえ。この場合は実際の残業時間に基づいて残業代を支給する必要があります

すなわち固定残業代の40時間に加えて実際の残業時間の10時間分を支払う必要があるということです

先ほどの例に当てはめると以下のようになります。なお、計算を単純にするために深夜手当てや休日手当て、45時間を超えた場合の割増については考えないものとします

例:Aさんが月に50時間残業した場合の月給

通常の場合
給料:¥1,000 × 8 × 20 = ¥160,000
残業代:¥1,000 × 1.25 × 50 = ¥60,000
計:¥220,000

固定残業代が40時間分支払われている場合
給料:¥1,000 × 8 × 20 = ¥160,000
固定残業代:¥50,000(40時間分)
残業代:¥1,000 × 1.25 × 10 = ¥12,500
計:¥220,000

 

同額ですね

このように固定残業代制度を取り入れていてもみなし残業代よりも実際の残業時間が長かった場合は実際の残業時間に基づく残業代の支払いと同額になります

ここまでのまとめ

みなし残業時間 > 実際の残業時間 --> 固定残業代を支払う

みなし残業時間 < 実際の残業時間 --> 実際の残業時間に基づいて計算した残業代を支払う

 

みなし残業は合法? 違法?

みなし残業は合法か違法かということですが、タイトルのとおりみなし残業は違法ではありません

というかみなし残業についての法律はありませんので違法合法以前の問題なのです

じゃあなんで解説するんだよというと、グーグルで検索するとみなし残業の違法、合法を問う質問が結構多かったからです

ここではみなし残業が合法に行われる場合と違法に行われる場合について解説していきます

まずは確認事項。何を持って合法、違法とするか

 

みなし残業は合法、違法以前の問題だと書きました。しかし、みなし残業が違法とされる場合があります。それはどこを見てそう判断されているのでしょうか

それは適切に残業代が支払われていない場合です

上の『みなし残業(固定残業代制度)についての解説』でも説明したのですが、みなし残業時間よりも実際の残業時間のほうが長い場合は実際の残業時間に基づいて残業代を払う必要があります

上の段落を飛ばした方がいるかもしれませんので、まとめだけ載せておきます

みなし残業時間 > 実際の残業時間 --> 固定残業代を支払う

みなし残業時間 < 実際の残業時間 --> 実際の残業時間に基づいて計算した残業代を支払う

 

固定残業代制度を採用していて違法になるよくあるケース

 

もっとも代表的な違法となるケースはみなし残業時間よりも実際の残業時間のほうが長いにも関わらず固定残業代しか払っていないケースです

その場合は違法となり、罰則が科せられます(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)

また、未払い賃金と最大同額の付加金を支払わなければいけなくなる可能性があります

次に深夜手当てや休日手当て、残業時間の上限を超えた場合の割増賃金を計算にいれていない場合です

固定残業代は通常深夜手当てや休日手当てはカウントせずに通常の割増賃金だけで計算するのですが、固定残業代を払っていても深夜手当てや休日手当ての割増賃金の支払い義務を逃れることはできません

これを支払っていなくても違法となり罰則が科せられます(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)

こちらも未払い賃金ですから同じように未払い賃金と最大同額の付加金を支払わなければいけなくなる可能性があります

最後に未払い賃金を含めて最低賃金ラインをクリアしている場合です

都道府県には地域によって最低賃金が定められていますが、この最低賃金を求める場合固定残業代は除いて計算します

この最低賃金に満たない金額を給料として支払っていると違法となり罰金(最大30万円)が科せられます

まとめると以下のようになります

固定残業代制度を採用していて違法になる代表的なケース

  • みなし残業時間よりも実際の残業時間のほうが長いのに固定残業代しか払っていないケース
  • 深夜手当てと休日手当て、残業時間の上限を超えた場合の割増賃金を計算せずに支払っていた場合
  • 賃金の時給を計算するときに固定残業代を含めて計算してしまって最低賃金を割ってしまっていたとき

 

追記:固定残業代制度に関する誤解について

 

書く場所が無かったのでこの場所に書いておきます

固定残業代制度で誤解されがちなのが、この制度を取り入れているからといって労働者の労働時間を把握しなくてもいいということではないということです

労働者の労働時間の把握は会社の義務ですから、きちんとした方法で労働時間を管理記録しておく必要があることをご注意ください

まとめ

 

いかがだったでしょうか

みなし残業制度について理解が深まったと思っていただければ幸いです

次回はみなし残業時間(固定残業制度)のメリット・デメリット、みなし残業時間(固定残業制度)にたいする私の考えについて解説したいと思います

今回は以上となります

この記事が皆様のお役に立てれば幸いです